参考文献

1.欧文献

・Willi Apel. The Notation of Polyphonic Music.
 Cambridge, Mass.: The Mediaeval Academy of America, 1942.
・Carl Parrish. and John F. Ohl. Masterpieces of Music Before1750.
 New York: W.W.Norton Co., 1951.

2.記譜法

・「ケルンのフランコ著『計量音楽論』全訳」皆川達夫訳、『音楽学』36、音楽之友社、1990年。
・「フィリップ・ド・ヴィトリ著〈アルス・ノヴァ〉全訳」中世ルネサンス音楽史研究会訳、『音楽学』9、音楽之友社、1973年。
・O.ハンブルク編『五線譜で辿る音楽の歴史』徳永隆男、戸口幸策訳、アカデミア・ミュージック社、1982年。(Otto Hamburg, Muziekgeschiedenis in Voorbeelden. Utrecht, Het Spectorum,1973)
・B.シュテープライン『単音楽の記譜法』人間と音楽の歴史。:中世とルネサンスの音楽・第4巻、音楽之友社、1986年。(Bruno Stablein,Schriftbild Der Einstimmigen Musik. VEBDeutscher Verlag fur Musik  Leipzig, 1981)
・H.ベッセラー、P.ギュルケ『多声音楽の記譜法』人間と音楽の歴史。:中世とルネサンスの音楽・第5巻、音楽之友社、1986年。(Heinrich Besseler/Peter Gulke, Schriftbild Der Mehrstimmigen Musik. VEB Deutscher Verlag fur Musik Leipzig,1981)
・NHK交響楽団編『楽譜の本質と歴史』楽譜の世界1、日本放送出版協会、1974年。
・皆川達夫『楽譜の歴史』music gallery 8 音楽之友社、1985年。
・皆川達夫「記譜法の歴史」全10回『音楽芸術』、音楽之友社、1957年1月〜1958年3月。
・皆川達夫「中世後期から現代までの記譜法の変遷」全12回『音楽芸術』音楽之友社、1959年2月〜1961年2月。

3.音楽史

・W.ギーゼラー『20世紀の作曲』佐野光司訳、音楽之友社、1988年。(Walter Gieseler, Komposition im 20. Jahrhundert: Detalis---Zusammenhange. Moeck, 1975.)
・G.キンスキー編『目で見る音楽史』門馬直衛訳、音楽之友社、1954年。(Georg Kinsky, Geschichte der musik in bildern. n.p., n.d.)
・笠原潔『音楽の歴史と音楽観』日本放送出版協会、1992年。
・金澤正剛『中世音楽の精神史』講談社(選書メチエ126)、1998年。
・今谷和徳『中世・ルネサンスの社会と音楽』音楽之友社、1983年。
・皆川達夫『バロック音楽』講談社(現代新書291)、1972年。
・長木誠司監修『作曲の20世紀(2)』クラシック音楽の20世紀第2巻、音楽之友社、1993年。

4.音楽学・その他

・A.オデール『音楽の形式』吉田秀和訳、白水社(文庫クセジュ)、1973年。(Andre Hodeil, Les Formes de la Musique. Presses Universitaires de France, n.d. )
・T.G.ゲオルギアーデス『音楽と言語』木村敏訳、講談社(学術文庫)、1994年。(Thrasybulos G.Georgiades, Musik und Sprache---Das Werden der abendlandischen Musik dargestellt an der Vertonung der Messe. Springer-Verlag, Berlin: Gottingen: Heidelberg,1954.)
・P.ブーレーズ『現代音楽を考える』笠羽映子訳、青土社、1996年。(Pierre Boulez, Penser la musique aujourd'hui. Geneve, Editions Gonthier, 1964)
・J.J.ナティエ『音楽記号学』足立美比古訳、春秋社、1996年。(Jean-Jacques Nattiez, Musicologie generale et semiologie. Paris,Christian Bourgois, 1987)
・G.サモシ『時間と空間の誕生』松浦俊輔訳、青土社、1997年。(Geza Szamosi, The Twin Dimentions ; Inventing Time&Space. McGraw-Hill, 1986.)
・芥川也寸志『音楽の基礎』岩波書店(岩波新書)、1971年。
・柴田南雄『音楽の理解』青土社、1987年。
・湯浅譲二「時間性と私--作曲の現場から」『ポリフォーン』Vol.4、TBSブリタニカ、1989年。
  *なお、本文、及び、参考文献表の書式、特に音楽に関するものは、〈リチャード J.ウィンジェル『音楽の文章術』宮澤淳一、小倉眞理訳、春秋社、1994年。〉を参考にした。

あとがき

 私が、記譜法に興味を持ったのは、1998年4月に行われたパフォーミング・アート[Phaethon]の企画が始まった頃でした。私は、このパフォーマンスに作曲家として参加し、様々な分野のアーティストと仕事をする機会を得たのですが、当初の企画では、音楽を起源に「時間」に関するパフォーマンスをするということで、音楽と時間の関わりについていろんな人と話し会い、私なりに考えを深めていました。単なる趣味にすぎないのですが、私は、作曲家として、いままで、いくつもの曲を楽譜に書きとめてきました。そして、そのことに何の疑問も抱いていなかったことに、その時、気がついたのです。私は、クラシック以外の作曲もしていましたし、楽譜という手段を使わない作曲、即興演奏などもしていて、図形的な楽譜を書いたこともありました。しかし、そのことの、必然性や、選択に対する疑問を感じたことがあったでしょうか?ポピュラーな音楽には、メロディ・スケッチとコード。ジャズには、もう少し複雑化したテンション・コード。純正のクラシックには、近代五線譜法。即興性を重視したい時は、図形的な楽譜。つまり、私は出揃ったメディアをそれに対応するという理由で、使い回していることに、作曲家として疑問を持っていなかったのです。そういう反省があって、今回の機会を借りて、楽譜、つまり、音響現象を表記する代理記号について考えてみようと思いたったわけです。そして、もう一つの文脈で、私が、関わってきた舞台的なもの、つまり可視的なものと音楽との関わりについても考察したいと考えたのです。残念ながら、今回は、西洋の楽譜について説明的にでも、まとめておきたいと思ったので、可視(表現)との関わりについては、楽譜という文脈から少しだけしか触れることはできませんでしたが、音楽の展開と記譜法のあり方が、こんなにも、ダイナミックに連結しているとは、まさに新鮮な発見でした。これは、音楽史として、見落としがちなことだと思います。もう一つ残念なのは、ルネサンス以降、大変な影響力を持つ事になる楽譜印刷の意義について書けなかったことです。これは、日本ではまだ資料が少なく、また、技術史的な側面も絡んでくるので、私の未熟な筆では、割愛せざるを得ませんでした。さらに、今回、理由があるとはいえ、西洋の音楽史に限定せざるを得なかったことも、今後の課題の一つになるでしょう。本文中でも、述べたように、楽譜がなければ、作曲が出来ないわけではありません。しかし、楽譜が、作曲の助けとなり、少なくとも、作曲者が、それを利用している以上、楽譜に対する広い認識は、絶対不可欠なものだと思います。
 本文の執筆が一段落したころ、全盲のピアニスト、梯剛之氏が、ロンティボー国際コンクールで第二位を受賞したという嬉しいニュースが飛び込んできました。楽譜を読まなければならない演奏家にとって、目が見えないことはどんなに、ハンデになるのでしょう。それでも、点字楽譜によって、彼が人並み以上の努力をし、この栄誉に輝いたというニュースは、私にいろいろなことを考えさせてくれました。彼は、その指で楽譜を精読し、同じ指で音楽を創造するのだなと思う時、視覚を第一野とする人間の、聴覚芸術への憧れのようなものを感じずにはいられません。音響現象を可視化するという営みの背後には、このような人間の本質的な、聴覚に対するコンプレックスが隠されているのかもしれません。こういったことは、今後、是非、つきつめて考えていきたいことです。
 最後になりますが、この論文を執筆するにあたって、ご教唆くださった、酒井紀幸先生に、謝辞を表したいと思います。
1998年12月。A.オネゲル「クリスマス・カンタータ」を聞きながら。